吹きガラスの魅力〜GlassStudioCalore(カローレ)〜

アート&クラフト
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亀岡市保津町に吹きガラスの工房を構えるGlassStudioCalore(カローレ)さん。 GlassStudioCaloreさんはガラスの美しさと、ぬくもりが感じられる優しさのあふれる作品を作っていらっしゃいます。 今回はGlassStudioCaloreの松本さんにものづくりについてインタビューしました。 

 

【かなPON log】23 日々の暮らしに使いやすい吹きガラス GlassStudioColore特集

 

吹きガラスの作業工程を教えてください。
まずは、溶解炉で溶けているガラスを、長さ約1m40cmの金属のパイプに巻き取りま す。 次にパイプの反対側から息を吹き込んで、ガラスを膨らませます。 少し膨らませたら、また溶解炉でガラスに熱を加えて取り出し息を吹き込んで、道具を使って形を整えるという作業を10回ほど繰り返します。この温め直す作業を私たち職人は「焼く」というんです。英語ではリヒートと言いますが。また、ガラスコップの飲み口の部分を形作る道具など、ガラスの形を整える道具は7つほどあります。


息を吹き込む際に金属のパイプの先に付いたガラスの熱い空気が口元に登ってきたりしないんですか? 
来ないですね。よく聞かれるのですが。金属のパイプは長さが約1m40cmほどあるので、パイプの真ん中から上は熱くないんですよ。なので熱い空気は口元に来ないです。

大変なことはありますか?(作家さんとして) 
販売が一番大変ですね。吹きガラスは練習したらできるようになりますが、販売はそうはいきません。また、吹きガラスの作業で言うと、安定して同じサイズ、同じクオリティーの作品を作ることです。私たちは型を使用しないで作品を作ることが多いので、全く同じものを作ることは難しいです。たまに、全く同じクオリティーのものを注文されるお客様もいますが、難しいですね。でも、吹きガラスはそういうものであると思っています。同じ色をしてても、ガラスの厚みが違ったり、高さが違ったり。一つ一つの作品に個性があるのです。大量に機械で作られる全く同じクオリティーの製品も、それはそれで良さがあります。でも私たちは吹きガラスの「個性」という魅力を大切にしています。 

作品の発想はどこから得ているのですか? 
特に意識しているわけではありませんが、自然からヒントを得ることが多いように思います。注文が入ると山の中をぶらぶらしながら、どのようなものを作ろうかと考えることもあります。例えば青い空を見たら、青色の作品を作ろうとか。それをタイトルにはしませんが、なんとなくイメージして作ることはあります。また、自分でなんとなくイメージして作ったものをお客さんが見て、「これ○○みたいですね」って当てられた時は嬉しくなります。 

松本さんが吹きガラスを始めたきっかけはなんですか? 
「人と違うことがしたい」と思ったからです。高校を卒業してアルミ板金の会社で営業として働いていた時に、会社でアルミの溶接をさ せてもらったことことがあるんです。アルミの溶接は難しい作業らしいのですが、その時の私は意外とその作業ができて、自分は器用なんだと思いました。そこから、営業の仕事をしながら溶接練習させてもらっていました。ある時、PL法という法律ができ、工場の機械にカバーをつけないといけなくなったんです。それに合わせて取引先の方からカバーのデザイン設置依頼がありました。仕事を引き受けたのですが途中で当時の上司部長に私にはできないと思われ、部長がプロジェクトを進めることになりました。私に仕事を頼んでくれた方から「君に任せたのになぜ部長がやっているのと?」怒られました。その時はなんて理不尽なんだと感じました。
そんなことがあった後に、社員旅行で小樽に行ったんです。そこで初めて吹きガラスに出会いました。それまで吹きガラスを知らなかったのですが、出来上がったガラス作品の美しさと作業の大変さという二面性に驚きました。 同時に、世の中で営業という仕事をしている人はたくさんいるけど、吹きガラスをやっている人は自分の周りにいない、「自分にしかできないことはこれだ!個性を生かし人と違う事が出来る」と思いました。 

吹きガラスの魅力はなんですか? 
出来上がった作品と、作業との二面性です。出来上がった作品は涼しげで美しいけど、それが出来る過程には 暑い工房で体を動かしながら制作する作業風景がある。そこが面白いんです。 あと、仕事の流れでいうと、デザインから販売までを全て自分でできるところです。他の仕事では分業することも多いけど、吹きガラスは望めば全て自分でできるんです。一連の工程を自分でできるからこそ、お客さんが商品をじっくり選んで購入して、その後 大切に使ってくれたときの喜びは大きいです。 

先ほども言いましたが、吹きガラスの作品には個性があるので、デザインだけでなく、同じデザインでもたくさんの個性のある作品の中からお気に入りを選んで購入されるので、 じっくり選んだ分、大切に使ってくださるんです。それが嬉しいですね。逆にすぐ決めてすぐ購入される方がいらっしゃると、ちょっと寂しいですね。


Caloreさんのものづくりについて教えてください。

ガラスの作品って綺麗だけど冷たい感じがしませんか?でも私たちはガラスの中にも木や土、人のようにに”ぬくもり”があると感じています。そのぬくもりを感じてもらえるように、色や形を工夫しています。ガラスの薄さを際立たせた器があり、デザインも洗練されていて美しくかっこいい印象ですが、私は普段使いに向いていないように感じています。昔、私もガラスは厚さが薄いほどいいと思っていたので厚さの薄いものを作っていました。その頃ちょうど 友人の結婚式があって当時私ができる最高の薄さで作品をプレゼントしたらとても喜んでくれたのですが、洗うのが怖いからという理由で普段使いはされませんでした。やはり見た目がかっこよくても、使う時 に緊張するものは使いづらいということに気付いて、それから普段使いを意識して実用する上でできるだけ緊張しないで使える器を心がけるようになりました。

 

工房では積極的に吹きガラスの体験や講座を開いていらっしゃいますが、どうしてですか? 
吹きガラスのことを伝えたいんです。 大阪デザイナー専門学校に通ってる時、友達に何をやってるの?と聞かれて「吹きガラスだよ」と答えたら「大変だね、高いところで」と言われたことがあるんです。 その時「何言ってるんだ?」と思って「どういう意味」と聞くと、その友達が”吹きガラス”を高いビルに登って窓を拭く方の”拭き”と勘違いしていることがわかりました。 この勘違いをする人が実は結構いて驚いたんです。。。
「自分は吹きガラスということをやっているのに、吹きガラスのことを知らない人が多いんやなぁ」と思いました。それは吹きガラスの認知度が低いということだし、名前は知っていても実際にどういう過程で一つのグラスが作られているかということは知らない人が多い。 知らないことが悪いということではなくて、ただもっと吹きガラスのことを知ってもらいたいと思い体験や講座を開いています。 吹きガラスは一つ一つ個性があること、どんな工程で作られているのか、どれだけ手がかかっているのか、吹きガラスのことについて知っていただければなと思っています。 また、僕たちの工房では小さいお子様にも一から吹きガラスの体験をしてもらうのですが、吹きガラスの体験は親子で同じ目線で同じ物事を共有できると思っています。 

多くの場合、大人は知っていて子供は知らないってこと多いでしょ。でも吹きガラスの場合は大人でも知らないことや、やったことの無い人が多い。だから一緒に初めてのことを体験できるんです。
また、お子さんには自分で頑張って作ったものは愛着が湧くので、物を大切に使うという感覚を持ってもらえると思います。一生に一回でいいから吹きガラスを体験して、自分のグラスを作ってほしいです。大切に使えば一生物ですから。 

私は、吹きガラス体験を天職だと思っています。職人さんで工房を開放したり、体験をやりたくない方もいると思うのですが、私は何度吹きガラス体験をお手伝いしても毎回人が違い、リアクションが違うので新鮮な感覚でいられるんです。毎回緊張するし、飽きることがなくて本当に楽しいですね。

GlassStudioCaloreさんの作品はこちらからご購入いただけます。

紹介動画はこちら

 

この記事を書いた人
わざどころPON

あなたの想いを形にする、地域の技のプラットフォーム。
あったらいいなを現実に。事業や活動の情報発信、商品開発のサポートを、南丹地域の人や物を介して伝えるコーディネートをしています。
実店舗は、雑貨屋さんのよう。地元の工芸作家の作品などが並びます。地元のお菓子や、作家さんのうつわでカフェコーナーもあります。
南丹ガールでは、PONから派遣したライターさんの記事を掲載しているのと、ドメインなどの管理をおこなっています。

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